【後編】フォーラム 「茶・藝・道 −売茶翁と現代ストリート文化−」

フォーラムレポート【後編】は、パネルディスカッションについて。

 

パネリスト
・錦織 亮介氏(福岡市美術館館長)
・狩野 博幸氏(美術史家)
・木村 勝彦氏(長崎国際大学副学長)
・毛利 嘉孝氏(東京藝術大学教授)
・オレクトロニカ(美術ユニット/加藤 亮氏 + 児玉 順平氏)

コーディネーター
・花田 伸一氏(佐賀大学芸術地域デザイン学部准教授)

 

はじめに、今回コーディネーターを務める花田先生より、改めてこのフォーラム開催の経緯をお話ししていただきました。

 

花田:美術という言葉ではやってはなかったけれども、一つの芸術的な営みとしてすでに「茶道」が確立されているじゃないかと。これをもっと日本のアート関係者は誇りにしていいんじゃないかと思うわけですね。千利休、岡倉天心、そして売茶翁という繋がりで日本のアートの独自の姿を、あまり肩肘張らずに自然体な姿で作り上げることができないだろうか、というのが根っこの背景としてありました。それと佐賀のアートシーンを盛り上げたい、というときにアートについて語り合える場、人々が出入りしながら表現について芸術談義が花開かせられる「場」が必要だろうということを考えまして、「カフェ」。そのような場を作るときに「カフェ」は大きなやり方として有効なんではないか、飲食を通じて心をリラックスした状態で、芸術の話が気軽にできる「場」がほしいと、というようなことを考えておりました。

売茶翁をヒントとしながら「アートカフェ」のような「場」をこれから展開していきたいと、キックオフのために今日のフォーラムを企画したわけです。

 

次に各講師の講演を終えての感想を伺い、ディスカッションへ入っていきました。
講師の感想を抜粋しております。

 

【各講師感想】

錦織 亮介氏
今回のフォーラムは、オレクトロニカの方向性がメインではないかなという気がしましたし、それから佐賀大学芸術地域デザイン学部が目指すところもそうかなと、要するに佐賀においてアートを使ってまちおこしをするという、そのことがこのフォーラムの目標かなと、そのような気が少ししてきました。

現代美術や美術館街でのパフォーマンスなど、街へ出ていくという動き、そういう動きに合わせて実は美術館の上にいる行政の人たちも、人がたくさん集まって交流する場にしてください、と言ってくる。その交流の場としての美術館・博物館というものの動き・流れが私は今、日本全体に広がっているような気がしていて、そういう交流の場をアートをもってこの街の中で行うというのかなあとちょっと思いました。

 

狩野博幸氏
私は先ほどのお話の中で、自由という言葉を使いました。実は自由という言葉は、今と同じ意味で、すでに16世紀の日本でも使われております。

例えば17世紀に入って芭蕉のお弟子さんが書いた文章がありますが、「我々の蕉門(芭蕉の一門)の俳諧は自由たるなるゆえに」という言い方を使っています。その自由というのはまさに自由です。
どんな題材でもいいんだと、和歌の世界で使ってはいけない言葉がありますけれども、そうじゃないんだと、なんでも使っていいんだとそういうことをもうすでに行っております。西洋的な考えが何か日本に影響を与えたということは全くありません。そのことを元に、売茶翁という人を考えていくともっと、売茶翁は我らと同世代人だと常々思っているので、まあ20分では言いたいことの何分の一も話せませんでしたが、そういう自由ということを日本人が本当に考えていった。

 

木村 勝彦氏
非常に自由な現代ストリート文化を論じ、その売茶翁を論じる時に、売茶翁は道がいやで、道というものにとらわれるのがいやで、市井に生きていたような気がするんだけれども、どうしてもフォーラムのタイトルには「茶・藝・道」、「道(どう・みち)」と言う風につけてしまう。その辺を少し考え直してみるというか、そこがやっぱりこのフォーラムの目指すところというか、議論の的じゃないのかなという気がしました。

 

毛利 嘉孝氏
僕の方はですね、花田さんと職種が違うと言われれば違うんだけど、割と見ている世界は似てると思うんですよ。僕はこの企画はぐんぐんくるんです。「あ、こういうことやりたいな」と思うし、すごく必然性があると思うので。
こうした物語が若い人にすごくインスパイア、刺激を与えることは確実だと思うんですよね。そのためにもすごくいい思考のレッスンみたいな会だったなという気はする、もうちょっと長い時間で議論できるような会の方がいいとは思うんですけれども、そういう可能性がある感じはしますね。

 

 

オレクトロニカ 児玉 順平氏
最終目的としてアートプロジェクトを佐賀で行うというところがあるんですけれども、そこに僕たちがどういうことができるのかとか考えていたりしたんですけど、竹田で僕らがアートプロジェクトを衝動的に始めたのは、あと住み始めたのはなぜかなーって考えたんですけれども、やっぱりこう、ない!いろいろないっていうところが、一番だったかなと思うんですよね。飛び抜けて売りがないとか、栄えてないとかいうのは非常に美術をやるとかイベントをやる上で、やりやすいなと思っていて、地域に行ってなんでも試せるというのがいちばんのメリットだったりすると思うので、佐賀にきてですね、試せるなと思ったんですね。渋い売りがいっぱいある!(笑)
これで推していこう!みたいなのよりは、余白がありますよね。アートはやりやすい。絶対いいなと僕は思っております。

 

オレクトロニカ 加藤 亮氏
売茶翁が茶を売ってたということは事実だと思うんですけど、僕はこれ(制作物)を普段作っていて最近はこれを路上で売りたいと思うんですよ。その路上というのが本当に道端で屋台とか風呂敷を広げて行商する、なんか貝を売るおばあちゃんのように売りたい、そういう風にこれを思って作ってるし、安く売りたいし、誰でもいいからとにかく見てもらいたい、買わなくても見てもらいたいと思う。そういうのは売茶翁がやりたかったことかなと思うし、、、
売らないと売茶翁が売茶翁じゃなくなるという思いもあったんじゃないかなと、売るってことが今回大事なことなんじゃないかなと、お話し聞きながら思ってました。

 

 

オレクトロニカが佐賀でやろうとしているプロジェクトについて、場づくり、自由についてなど、大きな広がりを見せたパネルディスカッションとなりました。

参加者のアンケートを見ていると、「佐賀でのアートプロジェクト、おもしろそうです。」「売茶翁やアートをもっと知りたくなりました!」と言う声が多かったことが印象的でした。

佐賀での売茶翁アートプロジェクトの盛大なキックオフとなり、今後の展開が楽しみです。